卒業
厳粛で厳かな雰囲気の中にも、卒業生のみなさんの表情には本校で過ごした日々に対する充実感があふれ出るとても素晴らしい卒業式となりました。
ここに改めて本校に変わらぬ御支援をいただいた皆さまに感謝いたします。
式辞の中で私の思うところを述べさせていただきましたが、ここにその要旨を記し、卒業されたみなさまへのはなむけの言葉とさせていただきます。
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3月の声を聞くと、穏やかな陽射しの中で木々も一気に芽吹きを始めた今日の佳き日、埼玉県立松伏高等学校 第33回卒業証書授与式を挙行するに当たり、多数のご来賓の皆様のご臨席を賜って厳粛のうちにも心温まる卒業式を執り行うことができますことは、教職員一同の大きな喜びであります。高い所からではありますが、ご臨席いただきました皆様に心からお礼申し上げます。
ただいま卒業証書を授与しました217名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。教職員一同、皆さんの卒業を心より祝福いたします。またご列席の保護者の皆様には、お子様が立派に成長し、本校を卒業されますことを心よりお喜び申し上げます。
保護者の皆様には、一人一人の卒業生が、勉強、部活動そして学校生活において物事に果敢に挑戦するなかで不安を感じたり悩んだりした時に、自らの力を信じ、自らの力で解決していくための適切な助言をいただいたこと、そして深い慈愛を持って多大な支援をいただいたことを、教職員一同心より感謝しております。本当にありがとうございました。
さて、卒業生の皆さん、松伏高校で過ごしたこの3年間は、君たち一人一人にとってかけがえのない、また思い出深い年月であった
と思います。同時に本校にとっても意義深い3年間でありました。
私にとっては皆さんと共に過ごせた時間は1年間だけでしたが、赴任前から松伏高校が落ち着いた学校であり、生徒たちは誰もが明るく挨拶をしてくれるとの評判を聞いておりました。
今でも忘れられないことですが、1学期の始業式で初めて皆さんを目の当たりにして、皆さんの持つ素晴らしさは評判以上であり、私の想像を大きく超えるものだと確信いたしました。
まだ学校の様子が十分につかめないでいる私のつたない挨拶に対して、皆さんは一生懸命に聞き入ろうとし、私の問いかけに反応するという配慮を示してくれました。
相手の立場や状況を瞬時に感じ取り、それに見合った対応をする。
これはまさに人を慮る行為であり、一朝一夕で身につく能力ではありません。
大人であっても簡単にはできないことが、皆さんには難なく自然にできる。
これがみなさんの素晴らしさなのです。
私が赴任前に聞いていた「松伏高校は素晴らしい」との評判は、学校が素晴らしいのではなく、要するにそこに通っている皆さんが素晴らしいということなのです。
さて、3年間の高校生活では、うれしいことや楽しいこと、苦しいことや悲しいことなど、さまざまな出来事が繰り広げられたことでしょう。
たくさんのお客様がお見えになった体育祭や松華祭、そして沖縄への修学旅行。MSPや長距離走大会もありました。さまざまな行事を行う中で、仲間と協力して取り組み、みんなで切磋琢磨することを覚えました。
定期考査のたびに徹夜で勉強をし、友達と励まし合い、その成績に一喜一憂し日々。
そして就職試験や入学試験に向けて、一生懸命面接の練習や問題集を繰り返し日々。
これらを通じて皆さんは学力の大切さを知ったはずです。
3年間の中では壁に突き当たり、悩み、ときには不安で心がふさぎ込むようなときもあったでしょう。
そのときに相談に乗ってくれた保護者の方々、担任の先生、あるいは顧問の先生。
アドバイスや励ましが、悩みを抱える人間にとってどれだけ心強いものかを理解したことと思います。
皆さんが3年間で経験した様々なことは、これから皆さんが歩んでいく人生の中で大きな武器となるに違いありません。
入学した頃の皆さんが持っていた小さな羽は、3年間の年月の中で立派な被毛に覆われた力強い翼となりました。
そして今日、皆さんはこの翼で、松伏高校から人生という大空へ飛び立ちます。
皆さんが飛び立っていく21世紀の社会は、波乱の時代の到来を予感させます。
世界を俯瞰すれば、不透明感を増す経済情勢や欧州における大量の難民受け入れ問題、あるいは世界の最富裕層の上位1%が世界の総資産の約半分を占めているともいわれる貧富の格差。
一方、国内に目を向ければ、我が国は世界の中でいち早く「少子高齢化社会」を迎えつつあります。
このような社会の中では、異なる文化や文明との共存や協働の必要性がますます高まっていきます。
また、人口減少に伴う高齢化率の上昇、生産労働人口の減少が進行するなかでは、地球的な視野に立って地域のことを考え行動する人材が必要とされます。
具体的には、柔軟な発想を持ち、お互いの置かれた状況を慮り、世代を超えて様々な人と連携しながら課題を解決していく人材や、地域や国家のために、あるいは後世を生きる人たちのために貢献しようとする志を持つ人材が必要とされています。
顧みれば、皆さんは自ら未来を切り拓き、そして地域・国家に貢献できる人材に育つべく、教職員の指導や地域の方々の助言のもと、本校で着実に努力を重ねてきました。
皆さんは、困難な現状を嘆くのではなく、現状を打破するための知恵と勇気を身につけることを目標に地道に努力を重ねてきました。
また、人の価値は一生をかけてどれだけの物を得たかよりも、どれだけの物を他人に与えられたかで決まることを覚えてきました。
それ故、松伏高校で学び、仲間同士で切磋琢磨した君たちは、これからの時代が必要とする、我が国になくてはならない人材であると私は確信しています。
保護者のみなさま、お子様の御卒業、誠におめでとうございます。
立派に成長した我が子の姿に、感慨もひとしおのことと存じます。
私たちは3年間、大切なお子様たちをお預かりし、社会に貢献できる人材として育てるよう日々努力してまいりました。私たちなりに精一杯指導してまいりましたが、保護者のみなさまから見れば、決して十分ではなかったかもしれません。
しかし、今ここにいる卒業生たちは、そんな私たちの想像をはるかに超える成長を見せてくれました。
私たちは本日、頼もしく成長したお子様たちを保護者のみなさまのもとへお返しいたします。
卒業後の進路はさまざまですが、ひとりひとりがこれからの日本の未来を切り開いていくたいせつな人材として活躍してくれると信じています。
結びに、未来に飛び立つ卒業生の前途が幸多きことを祈念して、式辞といたします。
平成二十八年三月十一日
埼玉県立松伏高等学校長 坂上 節